選手を尊重するということは現場の指導者としてはなかなか難しいことと思われるのではないでしょうか。選手の自主性に任せてしまって失敗された経験も多いのではないかと思います。
尊重と似て非なるのが放任。尊重とはあくまでも相手が明確な意見を持てていることを理解した上で、その意見を実行させてあげることだ。反対に放任は相手の意見もさほど聞くこともなく全て丸投げで任せてしまうことです。
指導者の中にはこの区別がしっかりとついていない方もいらっしゃるのかもしれません。そうなると自分では選手を尊重しているつもりでも、結果としては放任になっている可能性もあるということです。
尊重ということは、選手と指導者との考え方に違いがあり、そのどちらの考え方を実行に移していこうかということがあるから出てくるのです。違いがなければ尊重ではなく、同意見だよねとなる訳です。
尊重をするための第一歩としては、まずはお互いの考え方の〃違いの部分〃をしっかりと認識することから始まります。ここが曖昧だと放任に向かっていきやすくなります。
次にその違いを生み出している考え方の要因を炙り出していくのです。例えば打率を上げたいという目的のために選手の側はフルスイングしたいという意見だったとします。それに対して指導者の側はミートバッティングをさせようという意見だったとします。
違いの部分は明確になりました。選手の側は「空振りしても思いきり振らないと迷いが生まれてしまう。」という考え方だとします。指導者の側は「空振りの数を減らすためにはコンパクトに振った方がボールをとらえやすい。」という考え方だとします。
こうなると意見の違いを生み出している要因は空振りに対する認識の違いによるものなんだと両者が理解できることでしょう。さらにここで話を深めます。選手は空振りしてもいいと考えるのは何故か?指導者の自分は空振りが嫌だと考えるのは何故か?と考えてみることです。
選手は「例え空振りしても思いきり振れることで自信を持って打席に立てる。」という考え方だとします。指導者の自分は「自分は空振りすることで打席で負けたような気がする。」という考え方だとします。ここまで話すと、これは個人の空振りに対してのメンタリティーの問題だと気づけることでしょう。
そこで初めて、実際に打席に立つのは指導者の自分ではなく、選手なのだから選手のメンタリティーが良い方向に向かう方を優先させて尊重してあげようという考え方になるということです。
こうした話し合いのない選手任せが放任なのです。選手がやりたいようにやらせてあげるというスタンスになってしまいます。尊重とは、あくまでも話し合って両者でしっかりと合意した上で選手を優先させてあげることなのです。