人はいかなる場所に生まれようが、自分の人生を切り拓いていく強い意志と自分の求める選択と自分が流した汗でいかようにもなれるし、いかなる場所にも行ける。国を離れて海外にだって行ける。
しかし、花は自分の意志ではない場所に種を飛ばされれば、そこがアスファルトであろうが、全く日の光を受けられない日陰であろうが、そこからは決して動くことはできない。
もっと栄養があって光を受けられる場所を求めても決して動けない。黙って自分の運命を受け入れて、黙して耐えて、懸命に根を張り、自分の花を咲かせていく。
自由であるはずの人間、自分の力で人生を作っていけるはずの人間。でも、人生の途中には自分の意志ではいかんともしがたい、自分の力ではどうにも選択できないこともある……
運命。もし、その言葉があるならそれを受け入れていくしかない時も。辛かろうが苦しかろうが、野に咲く花のように誰にも言えずに黙して耐えて自分の根を深く張らなければならない時が……
この状況の中で人々がここで咲かせることができるのは、どんな花なのか。ここは自分自身の心の種を信じるしかない。自分自身の生命力を発揮することしかできない。
どうにも辛く苦しい時は、普段は目にも止まらない道端に咲く花に目を向けて。何気ない一葉の風景が、時に心を慰め、時に心を強くしてくれることもあるだろう。運命を呪うでもなく静かに美しく咲く花のように。
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